鳥インフルエンザの防疫 [畜産とか獣医学とか]
愛鶏園が検体を偽装していて、かつ抗体陽性のものが発見されたというニュース
http://www.sankei.co.jp/news/051218/sha064.htm
愛鶏園に限らず、茨城を中心としたそこらじゅうの養鶏場で鳥インフルエンザ陽性の
ニワトリが出ている。
今、ここで書くのは躊躇したが、以前から気になっていたことなので書くことにする。
まず、ここで書くのを躊躇した理由を先にカミングアウトしておこう。
・私の親は牛飼いだったので、畜産農家の肩を持ってしまう
・愛鶏園に、大学時代の友人が居る
なので、以下は消費者側ではなく生産者側としてのバイアスがかかっているのでよろしく。
(ただ、大学卒業以来、愛鶏園の中の人はもちろん畜産業界の人とはまったく縁がないので、私が特別な情報を持っているとかいうことはない。)
以上をふまえて・・・
日本では、ニワトリに鳥インフルエンザのワクチンを使ってはいけないことになっている
理由はこちら↓
http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poultry/infl_vaccine.html
一方で、茨城を中心に、密輸したワクチンを接種しているらしい。
・・・といっても、私がインサイダーな情報を持っているわけではなく、
日本養鶏協会からもお知らせが出ている。
http://www.jpa.or.jp/news/item/2005/09/05/
鳥インフルエンザに感染した場合はもちろんのこと、この密輸ワクチンを接種した場合も
抗体価はプラスになる。
鳥インフルエンザワクチンを使ったニワトリ自体は、肉も卵も食べても全然問題ないが、
ワクチンを接種してしまった人たちは、ワクチンを打つこと自体が違法なので
「ワクチンを接種して抗体価が上っただけで、食べても大丈夫ですよ」とは言えない(のか?)。
#繰り返すが、愛鶏園がどうだったのかは知らない
検査する側(県)も、「抗体陽性=感染」とは考えてないので、陽性のニワトリが見つかったこと自体は、大騒ぎしてない。なんか変な感じである。
予防のために自ら打ったワクチンのせいで処分しなくちゃいけなくなるんじゃ意味ないので、
これから危険を冒して予防接種する業者はなくなるだろう。
しかし、無防備な状態で感染するとなると被害は甚大になると思う。
#農林水産省は、そのほうがトータルで被害を小さく出来ると考えているわけだが
日本で鳥インフルエンザで亡くなった人は居ないが、鳥インフルエンザで自殺した人が
2人(浅田農産会長夫妻)いることをみんなもっと考えて欲しい。
牛疫や口蹄疫のように港や空港で防疫できるのなら分かるが、感染地域から渡り鳥が
飛んできて、一旦国内で感染したら野鳥が媒介する可能性のある鳥インフルエンザで、
今のやり方がいいとは、私には思えない。
患畜を1羽たりとも入れないという戦略が、鳥インフルエンザでうまく行くのか?
日本で、鳥にも人にもこのインフルエンザが流行してしまったときには、無防備ってことっすよ。
一刻も早く、鳥インフルエンザのワクチンを解禁すべき、というのが私の意見。
でも、ワクチン打っちゃうと、抗体確認では感染の広がりを把握できないことになるよね。
それに、ワクチンを使用した場合、撲滅ができずに弱い感染が長期にわたって残ってしまうという事例もあるようだし。それを残すのは変異の活発なインフルエンザウイルスにはリスクが高いような。
ワクチンそのものの有効性というのも十分に検証されたものであるかどうかも怪しいし。
「復活の日」じゃないけど、卵がなくなると、各種ワクチンの製造もできなくなるので、微妙ではあるんだけどね。
by kinneko (2005-12-19 18:51)